自分が「不倫相手」と知らなかった第三者の心理 - 逆転訴訟のケース -

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突然、慰謝料を請求され、「自分が不倫相手だった」と知らされて戸惑ったことはありませんか。相手が既婚者だと知らずに関係を持ってしまった場合、責任は本当に問われるのでしょうか。もちろん、すべてのケースが同じ判断になるわけではありませんが、実際の紛争事例では、第三者の認識や経緯が結果を大きく左右していることも少なくありません。この記事では、だまされて関係に巻き込まれた側の心理に目を向けながら、法的な評価や「逆に訴える」可能性について考えていきます。

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突然、見知らぬ人から内容証明郵便が届き、「あなたは私の夫と不倫関係にある。慰謝料を請求する」と書かれていたら、どう感じるでしょうか。「相手が既婚者だなんて知らなかった」「騙されていた」という衝撃と怒り、そして法的責任への不安でしょうか。

実は、このような状況に陥る人は決して少なくありません。真剣に交際していたと思っていた相手が、実は既婚者で、気づかないうちに「不倫相手」になっていた。

この記事では、そのような第三者の心理状態と、彼らが慰謝料請求を受けた後にどのように対応し、場合によっては逆に訴訟を起こすケースについて解説していきます。

「知らなかった」人の典型的なパターン

マッチングアプリでの出会い

現代で最も多いのが、マッチングアプリを通じた出会いです。プロフィールに「独身」と書かれていれば、多くの人はそれを信じて関係を始めます。わざわざ相手の戸籍を確認する人はほとんどいないでしょう。

アプリ上では結婚指輪も見えず、デート場所も相手が選ぶことが多いため、既婚者であることを隠すのは比較的容易です。週末に会えない、夜しか連絡が取れない、といった兆候があっても、「仕事が忙しい」「生活リズムの問題」と説明されれば、疑わない人も多いようです。

職場での関係

職場恋愛も、相手の婚姻状況を知らずに始まるケースがあります。特に大きな会社や、部署が異なる場合、相手が結婚指輪をしていなければ、独身だと思い込んでしまうことがあります。「離婚協議中」「別居している」と言われれば、実際にはまだ法的に婚姻関係が続いているにもかかわらず、問題ないと考えてしまう人もいるようです。

意図的な嘘と巧妙な隠蔽

中には、非常に巧妙に既婚の事実を隠す人もいます。結婚指輪を外す、SNSのプロフィールを独身に設定する、自宅には絶対に招かない、家族の話を一切しない。

さらには、偽のアパートを借りて「ここが自分の家」と見せる人さえいるようです。このレベルになると、相手を疑わずに信じてしまうのも無理はないかもしれません。

真実を知った時の心理的衝撃

相手が既婚者だったと知った時、多くの人が経験する心理的プロセスがあります。

否認と混乱

最初は「そんなはずはない」「何かの間違いだ」と否認する段階です。内容証明郵便を受け取っても、「これは詐欺ではないか」「誰かの嫌がらせではないか」と疑う人もいます。

自分が信じていた関係が、実は全く違うものだったという現実を受け入れるには時間がかかります。相手に連絡しても繋がらない、あるいは急に態度が変わって冷たくなる、といった状況で初めて、事態の深刻さに気づくケースも多いようです。

怒りと裏切られた感情

現実を受け入れた後にやってくるのが、強い怒りと裏切られた感情です。「真剣に付き合っていたのに」「結婚まで考えていたのに」「すべて嘘だったのか」という思いが渦巻きます。

この段階では、配偶者よりも、嘘をついていた相手に対する怒りの方が強い場合が多いようです。自分の時間、感情、場合によってはお金まで投資していたのに、それがすべて無駄だったという喪失感も伴います。

法的責任への恐怖と不安

そして、慰謝料請求という法的責任に直面します。多くの人にとって、初めて法的トラブルに巻き込まれる経験となるでしょう。「いくら請求されるのか」「裁判になるのか」「仕事や家族に知られるのか」といった不安が押し寄せます。

特に、若い人や経済的に余裕のない人にとって、数百万円という慰謝料請求は人生を左右する大問題です。中には、精神的なショックで体調を崩してしまう人もいるようです。

法律上の「善意の第三者」は守られるのか

では、本当に相手が既婚者だと知らなかった場合、法的にはどうなるのでしょうか。

「故意または過失」の考え方

不貞行為による慰謝料請求が認められるためには、原則として、不倫相手が「相手が既婚者であることを知っていた」または「知らなかったことに過失がある」必要があります。つまり、本当に知らなかった場合で、かつそれを知らなかったことに落ち度がない場合は、慰謝料を支払う義務がない可能性があります。

ただし、これは理論上の話であり、実際の裁判では様々な要素が考慮されます。

「知らなかったこと」をどう証明するか

大きな問題は、「知らなかった」ことをどう証明するかです。法律の世界では、「知らなかった」という消極的な事実を証明するのは非常に難しいとされています。

むしろ、相手側から「知っていたはずだ」という証拠を提示されたときに、それに反論する形になることが多いようです。たとえば、「結婚指輪の跡があった」「休日に会えないことを不審に思わなかったのか」「相手の自宅に行ったことがないのはおかしい」といった状況証拠を積み重ねられることがあります。

過失の判断が難しい

たとえ「知らなかった」としても、「知らなかったことに過失がある」と判断される可能性もあります。過失とは、簡単に言えば「普通の注意を払っていれば気づけたはずなのに、気づかなかった」という状態です。

どこまでが「普通の注意」なのかは、ケースバイケースで判断されます。年齢、社会経験、二人の関係の長さや深さなど、様々な要素が考慮されるようです。

慰謝料を減額または免除される可能性のある具体例

「知らなかった」という主張が認められる可能性について、具体的な状況例を見ていきましょう。 以下は実際の裁判例ではなく、一般的に減額や免除が認められやすいと考えられるパターンを示したものです。

例 1:マッチングアプリで出会った20代女性

20代前半の女性が、マッチングアプリで知り合った30代男性と交際を始めました。男性は独身と名乗り、女性はそれを信じて交際していました。

半年後、男性の妻から200万円の慰謝料請求を受けました。女性は弁護士に相談し、以下の点を主張しました。

  • マッチングアプリのプロフィールには「独身」と記載されていた(スクリーンショットを保存していた)

  • 結婚指輪を見たことがない

  • 相手から「独身で一人暮らし」と聞いていた

  • 社会経験が浅く、疑うべき理由がなかった

結果として、このような状況では、「過失はなかった」と認定され、慰謝料支払い義務が否定される可能性があると考えられます。

例 2:「離婚協議中」という説明を信じた女性

別の例では、男性が「現在、離婚協議中で別居している」と説明していました。女性は、「法的にはまだ婚姻関係にあるが、実質的には終わっている」と理解していました。

慰謝料請求を受けた際、女性は「別居中と聞いていたので、夫婦関係は破綻していると思っていた」と主張しました。

このような状況で、実際に別居の事実が確認できれば、慰謝料が大幅に減額される可能性があると想定されます。ただし、「離婚協議中」という説明だけで完全に免責されるわけではなく、実際の別居の有無や、夫婦関係の実態が重要になると考えられます。

例3:相手の巧妙な嘘に騙された場合

男性が独身用のアパートを借り、そこを「自分の家」として女性に見せていたケースもあります。女性は何度もそのアパートに泊まり、男性の「一人暮らし」を信じて疑いませんでした。

このような巧妙な偽装があった場合、「知らなかったことに過失はない」と判断され、慰謝料が大幅に減額される可能性が高いと考えられます。

逆転訴訟:騙された側が訴え返す具体例

詐欺罪での刑事告訴の可能性

既婚者が独身と偽って交際し、金銭を受け取ったりした場合、詐欺罪に該当する可能性があります。

ただし、詐欺罪の成立には「財産的損害」が必要とされることが多く、単に「騙された」だけでは立件が難しいケースもあるようです。それでも、デート代を常に払わされていた、高額なプレゼントをした、同棲のために費用を負担したなどの事実があれば、刑事告訴も検討できるかもしれません。

民事での損害賠償請求

刑事告訴とは別に、民事で損害賠償を請求することも可能です。「既婚者であることを隠して交際したことにより、精神的苦痛を受けた」として、慰謝料を請求するのです。

実際に、この種の訴訟で数十万円から100万円程度の慰謝料が認められた例もあるようです。ただし、金額は一般的に不倫の慰謝料よりは低めになる傾向があります。

名誉毀損やプライバシー侵害での訴訟

相手の配偶者から不当な方法で情報を暴かれた、SNSで誹謗中傷を受けた、といった場合は、名誉毀損やプライバシー侵害で訴えることも考えられます。「不倫相手」として実名や写真をSNSに晒されたようなケースでは、逆に相手を訴えて慰謝料を獲得できる可能性があります。

「知らなかった」を立証するための重要なポイント

証拠の保存が最重要

まず最も重要なのは、証拠を保存することです。マッチングアプリのプロフィール画面、相手とのメッセージのやり取り、通話記録など、相手が「独身」と名乗っていた証拠をすべて保存しておきましょう。

削除してしまうと、後から証明することが困難になります。特に、相手が「独身」「一人暮らし」「結婚の予定はない」などと明言しているメッセージは重要な証拠になります。

相手の行動パターンの記録

相手がどのような行動をしていたかも記録しておくとよいでしょう。「平日の夜にしか会えなかった」「休日は必ず理由をつけて会えなかった」といった事実は、後から「おかしいと思わなかったのか」と指摘される可能性があります。

しかし、「仕事が忙しいと説明されていた」「平日休みだと言われていた」など、相手の説明内容を記録しておけば、「疑う理由がなかった」ことを示す材料になります。

早期に弁護士に相談

慰謝料請求を受けたら、すぐに弁護士に相談することが重要です。自分だけで対応しようとすると、不利な発言をしてしまったり、必要な証拠を保全できなかったりする可能性があります。

初回相談は無料という法律事務所も多いので、まずは専門家の意見を聞くことをお勧めします。弁護士は、あなたのケースで「知らなかった」ことが認められる可能性がどの程度あるか、どのような証拠が必要かなどをアドバイスしてくれます。

予防策:自分を守るためにできること

相手の情報を確認する方法

相手の婚姻状況を完全に確認する方法はありませんが、いくつかの参考になる手がかりはあります。

SNSでの情報確認や、共通の知人から話を聞くなど、無理のない範囲での確認は一定の判断材料になることがあります。ただし、過度な詮索や自宅訪問などは、プライバシー侵害となるおそれがあるため注意が必要です。

結婚指輪の有無や左手薬指の様子を観察する方法もありますが、あくまで補足的な判断材料にすぎません。

理論上もっとも確実なのは戸籍謄本・抄本による確認ですが、交際初期に求めるのは現実的でない場合も多いでしょう。将来を真剣に考える段階で、「結婚を前提に付き合いたいので確認したい」と丁寧に伝えることが重要です。

相手が説明を避けたり、確認を強く拒む場合には、慎重に関係を見直す必要があるかもしれません。

不自然な点への注意

いくつかの「赤信号」があります。

  • 休日に絶対に会えない

  • 夜遅い時間しか連絡が取れない

  • 自宅に招いてくれない

  • SNSに二人の写真を投稿することを嫌がる

  • 家族の話を一切しない

  • 将来の話をすると話題を変える

これらすべてが当てはまるからといって、必ずしも既婚者とは限りませんが、複数該当する場合は注意が必要かもしれません。

直接聞く勇気

最もシンプルで確実なのは、直接聞くことです。「失礼かもしれないけど、結婚はしていませんよね?」と確認することは、決して失礼ではありません。真剣に付き合うつもりなら、早い段階で確認しておくべき重要事項です。

もし相手が「なぜそんなことを聞くのか」と怒ったり、はぐらかしたりする場合は、何か隠している可能性があるかもしれません。

まとめ:被害者にならないために

自分が「不倫相手」だと知らずに関係を持ってしまった第三者は、ある意味で被害者とも言えます。法的には「知らなかった」ことが認められれば、慰謝料支払い義務を免れることも可能です。

しかし、それを証明するのは容易ではなく、たとえ免責されても、精神的な傷や時間的・金銭的な負担は残ります。

最も重要なのは、このような状況に陥らないための予防です。相手の言葉を無条件に信じるのではなく、ある程度の注意を払いながら関係を深めていくことが大切です。

それでも騙されてしまった場合は、早期に専門家に相談し、自分の権利を守る行動を取ることをお勧めします。場合によっては、逆に相手を訴えることも選択肢の一つです。「知らなかった」ということは、恥ずかしいことでも、責められるべきことでもありません。問題は、嘘をついた側にあります。

もし自分がこのような状況に置かれたら、一人で抱え込まず、信頼できる人や専門家に相談することが、問題解決への第一歩となるでしょう。

弁護士 若松辰太郎
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